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「ヴァージン・スーサイズ」「ロスト・イン・トランスレーション」で、親の七光りにとどまらない才能を遺憾なく発揮したソフィア・コッポラの待望の新作。
ベルサイユ宮殿でロケが行なわれたことに加え、フランスでは大ブーイングを受けたなど、公開前から話題には事欠かなかった。 日本でも大ヒットが続いていて、週末ともなれば行列覚悟で望まなければならないほど。そんな「マリー・アントワネット」を日曜日の渋谷に観に行った。 感想を書く前に、ちょっとしたエピソードから。 本編終了後、隣席に座っていた女性のひとことに大ウケしてしまった私。彼女はこうのたまったのだった。 「え? これで終わりなの?」 とまぁ、ソフィア・コッポラのことをご存知ない人からすれば、そう思うのも無理からぬこと。 とりわけ、波瀾万丈なマリー・アントワネットの人生を描いた、壮大な歴史物語を期待していた人にとっては、拍子抜けする部分もあるかもしれない。 でも、私の感想はちょっと違う。 「これって、18世紀のベルサイユを舞台にしたパンク・ムービーじゃね?」 というのが、見終わって真っ先に思ったこと。 SIOUXSIE AND THE BANSHEESやBow Wow Wow、Adam&The Ants、New Orderなどの80'sニューウェイブの名曲に加え、Radio Dept.やソフィアの夫君が率いるPhoenixなど最近のバンドの曲を巧みに取り入れる選曲センスはさすがとしかいいようがない。 アカデミー衣裳部門にノミネートされたというだけあり、キルスティンが身に纏う衣裳の数々にも目が奪われる。とはいえ、きらびやかなドレスの数々にしたって、色使いや素材使いなどのディテールからして、当時のそれとはあきらかに違ったハズ。 つまりは、70年代〜80年代のロンドンにおけるパンク・アイコンであったマルコム・マクラーレン&ヴィヴィアン・ウエストウッドがそうであったように、この映画でソフィア・コッポラが試みたのは、既成概念を破壊すること…という気がしてならない。 もちろん、クラシカルな価値観や美意識に対するオマージュというか、目配せも忘れていない。過去の価値観や美意識を踏まえ、いったんすべてを壊した後で、自分なりに再構築していく。 この映画は、そんなふうにして撮られた映画なのではないかと思う。 誰もが周知の歴史的事実なだけに、ストーリー紹介は極めてあっさり。 むしろ、マリー・アントワネット自体が感じていたであろう、世継ぎを残さなければいけないことに対するプレッシャーや、夫に愛されない孤独、愛人に対するせつない思いなど、感情的な部分を描くことにほとんどの時間が割かれている。 キュートな衣裳やカラフルなスイーツなど、物質的に恵まれてもなお埋まらない心の空洞。 恋も欲望も孤独も、250年前の人間も今の人間も、抱えている悩みはあまり変わらないのかもな…とあらためて思ってしまった。
by ofsongs
| 2007-01-29 12:10
| movie
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